アジア平和賞受賞について
共同代表 石垣義昭
私たち「憲法9条にノーベル平和賞を」実行委員会は今回、「アジア平和賞」を受賞しました。
この「アジア平和賞」というのは、「マラヤWWⅡ歴史研究会」(マラヤ第二次世界大戦歴史研究会)が今年創設したもので、私たちはその第一回の受賞者となりました。(マラヤは、1963年、マレーシアが出来る前の国名で、主にマレー半島とシンガポールを指します。)
授賞式は8月15日にクアラルンプールで行われました。その時に配られたパンフレットによると、「マラヤWWⅡ歴史研究会」という団体は、1995年、戦後50周年を記念して発足。会長は翁清玉(Weng Qing Yu)さんで、23の華人団体で組織された研究会です。様々な職業、例えば、大学教授、会社経営者、大学OB会会長、華人問題研究所所長、県人会幹部、元日本留学生会などで構成されているとあります。
活動内容はパンフレットの高嶋伸欣さん(琉球大学名誉教授)の文章がそれをよく表しています。
《第二次世界大戦は、地球上の全ての人々を戦乱の渦に巻き込み無数の悲惨・悲嘆の傷跡を残しました。その世界大戦での体験を語り継ぎ、二度と同じ悲劇を繰り返させないことをめざして、世界各地で戦後世代の人々が活動しています。「マラヤWWⅡ歴史研究会」もその一つで、私たち戦後世代も折ある毎に協力しあって来ました。》と述べています。
戦争は人を狂わせ、いつでも言葉に言い表せないほどの惨劇をもたらします。「マラヤWWⅡ歴史研究会」は、第二次世界大戦の引き起こした無数の悲惨・悲嘆の歴史を掘り起こし、心に刻み、二度と繰り返さないことを犠牲者の前に誓い、20年近くも鎮魂の式典を重ねて来ています。今回の授賞理由を次のように述べています。
《本研究会は第一回マラヤWWII歴史研究会「アジア平和賞」の受賞対象を「日本国憲法を67年以上もの間堅持し続けている日本のすべての人々」とした上で、具体的な受賞者は、「この日本の人々の心を世界中に伝え広めるという意図で、第9条へのノーベル平和賞授与を求める運動をよびかけ、全国的な運動にした“『憲法9条にノーベル平和賞を』実行委員会”」を最もふさわしいと判断した。》
《マラヤWWII歴史研究会としては、日本の権力者たちの政治的な動きとは別に、戦争体験を厳しく総括して、戦後の平和主義国家日本の姿勢をどこまでも守り通すことで、アジアの近隣諸国をはじめ世界からの信頼をより確実なものにしたいと努力を重ねている日本の草の根の市民に、心からの共感と声援を送ることで、アジアの平和確立を目指す賞の意義に相応しいと考えた。》
つまりこの賞は「日本国憲法を67年以上もの間堅持し続けている日本のすべての人々」「平和を願い努力している、日本の草の根の市民」に与えられたのです。
以上の経緯から、私は今回の受賞を次のように理解しています。
第二次世界大戦のもたらしたマレーシアの惨劇、そこには加害者がいて、被害者がいます。これは消し難い歴史的事実なのです。その事実を丹念に掘り起こし、遺骨は埋葬し、死者たちへの慰霊と鎮魂の式典を20年近く続けて来たマレーシアと日本の関係者によって生み出されたのが、この「アジア平和賞」であると。つまり、悲惨な歴史の事実と向き合い、被害と加害の厚い壁を乗り越えた両国の関係者が、再び悲惨な戦争は繰り返さないという「日本国憲法」の地平に立って生み出したのがこの「アジア平和賞」なのだと思うのです。
恥ずかしながら私は、戦後70年近くも過ぎた今まで第二次世界大戦によって引き起こされたマラヤの悲劇を知りませんでした。私は1941年の生まれです。この年の12月8日未明、日本は真珠湾を攻撃するのですが、その1時間ほど前、陸軍は密かにマラヤのコタバルに上陸し、シンガポールを陥落させます。そして、その後、マラヤの華僑の人たちに非道の限りを尽くすのです。今回いただいた北海道新聞(2009年9月6日から5回連載)や神奈川新聞(1996年3月11日)でその一端を知りました。知らないことは恐ろしいことだと改めて思いました。
満州や朝鮮や中国で戦争中に何があったかは多少は知っていました。私の父は中国の湖南省衡陽の戦場で昭和19年に31歳で死んでいます。戦争はいつでも加害者を生み被害者を生み出します。そこに生まれる抜き難い憎悪、戦争は最も深いところで人と人を引き裂くのです。
その厚い壁を「マラヤWWⅡ歴史研究会」の人たちは乗り越えて「アジア平和賞」を作ったのだと思いました。そして、「基本的人権」・「平和主義」・「主権在民」の理念に立つ「日本国憲法」を長年保持して来た日本の私たちにこの賞を授与してくれたのです。
世界各地に広まる紛争、そこに今も繰り広げられる悲劇の数々、負傷した子どもたち、それを抱きかかえる親の叫び、横たわる死者の映像が日々報じられています。そしてますます深まる様々な憎悪、この憎悪をどう乗り越えるのか!
一方、この憎悪の連鎖を何処かで断つ努力をしている人たちがいることも確かなことなのです。「マラヤWWⅡ歴史研究会」の人たちもそういう人たちでした。
複雑で困難な人類的課題に向き合う一歩をこの「アジア平和賞」が指し示している気がしてなりません。そこに私は「アジア平和賞」受賞の意義を感じています。とりわけ緊張の高まるこのアジアにおいてその一歩が刻まれたことに!
・マラヤWWII歴史研究会「アジア平和賞」設立への賛辞 高嶋伸欣 (琉球大学名誉教授)
( 第一届 马来亚二战历史研究会 “亚洲和平奖” 颁奖典礼 P10-11より)
http://nobel-peace-prize-for-article-9.blogspot.jp/2014/09/peace.html
・第一回 マラヤWWII歴史研究会 “アジア平和賞”授賞理由
(第一届 马来亚二战历史研究会 “亚洲和平奖” 颁奖典礼 P14-15 より)
http://nobel-peace-prize-for-article-9.blogspot.jp/2014/08/wwii_11.html
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第一回マラヤWWII歴史研究会“アジア平和賞”授賞理由
日本の平和憲法は1947年5月3日に施行されたもので、好戦的な大日本帝国憲法と違い、この新憲法の9条は次の事を明言した。
「①日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。② 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」
簡単に言うと、日本人は再び他国を侵略しないと誓っている。
残念ながら、この進歩的な思想と憲法は次第に力が回復している日本の右派な政治家や軍国の遺臣や遺民の陰謀術策のもとで、数々の危機に直面している。彼らは巧妙に拡大解釈など邪道でその変質を加速しており、再び日本を平和国家から好戦的な国家に変身させ周辺国家に脅威を与え、その地域の安定を破壊している。
これに鑑みて、厳格かつ真剣な審査を経て、本研究会は第一回マラヤWWII歴史研究会「アジア平和賞」の受賞対象を「日本国憲法を67年以上もの間堅持し続けている日本のすべての人々」とした上で、具体的な受賞者は「この日本の人々の心を世界中に伝え広めるという意図で、第9条へのノーベル平和賞授与を求める運動をよびかけ、全国的な運動にした“『憲法9条にノーベル平和賞を』実行委員会”」が最もふさわしいと判断した。
マラヤWWII歴史研究会としては、日本の権力者たちの政治的な動きとは別に、戦争体験を厳しく総括して、戦後の平和主義国家日本の姿勢をどこまでも守り通すことで、アジアの近隣諸国をはじめ世界からの信頼をより確実なものにしたいと努力を重ねている日本の草の根の市民に、心から共感と声援を送ることで、アジアの平和確立を目指す賞の意義に相応しいと考えた。
第一届 马来亚二战历史研究会 “亚洲和平奖” 颁奖典礼
【第一回 マラヤ第二次世界大戦歴史研究会 「アジア平和賞」授賞式】 2014.8.15 P14-15より
*2014-09-12 受賞理由の日本語表記をマラヤ第二次世界大戦歴史研究会の承諾の上、意味が変わらない範囲で修正しました。
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関連記事:
●中國報新聞 14 Aug 2014
「馬來亞二戰歷史研究會頒發 2日本人領和平獎」
http://www.chinapress.com.my/node/551751
●星洲日報 2014-08-14
「馬來亞二戰歷史研會‧今頒和平獎給日1團體」
http://news.sinchew.com.my/node/381512?tid=1
●東方日報 2014年8月15日
「日民间组织获亚洲和平奖」
http://www.orientaldaily.com.my/index.php?option=com_k2&view=item&id=132570:&Itemid=113
●南洋商報 2014-08-16
南洋社论:「珍惜和平不要战争」
http://www.nanyang.com/node/642466?tid=524
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第一届 马来亚二战历史研究会 “亚洲和平奖” 颁奖典礼