2020年1月1日水曜日

日韓平和フォーラムに参加して①


【石垣義昭】

 12月5日から7日まで韓国の江原道春川で開かれた日韓平和フォーラムに実行委員会から竹内康代、羽生田友貴、と私が参加しました。最も印象的だったことはキャンドル革命(2016年)と言われる市民のデモによって朴槿恵政権が弾劾され(2017年)、新しく生まれた文在寅大統領の下で市民目線の国づくりが進んでいたことです。私たちが接したのはほんの一部分に過ぎません。しかしそこには日韓の対立を煽る日本政府や一部の情報誌とは全く異なる穏やかな市民の姿がありました。地下鉄のアナウンスや乗降する人々のしぐさや表情、夕食に入った大衆食堂(ソウル)での触れ合い、街角の焼き栗屋のおじさんとの会話にも平穏な韓国の今を実感しました。
 さて、日韓平和フォーラムは日本からの参加者132名の数が示すようにかつてない盛大なものになりました。落合正行氏の文章(p.4)で触れているように春川の翰林聖心大学の尹載善教授の今までの積み重ねが今回、まさに花開くものになったのでした。それを可能にしたのが「希望連帯」を束ねる白石孝氏との出会いにあったことが今回参加して分かりました。終始このお二人の司会で進行しましたが、地道な実績を持つ参加者の顔ぶれ、8分科会の各テーマもよく練られたものでした。
 少ない紙面で十分に伝えることはできませんが、第1分科会、日韓地方政府間の交流について、第2分科会、日韓市民社会の交流について、第3分科会、日韓市民社会における福祉交流について(学校給食と有機農業について)、第4分科会、東アジアの平和共存(地政学から地経学へ)、第5分科会、日韓交流のためのマスコミの役割、第6分科会、日韓の原子力協力について(福島原発の教訓)、第7分科会、日韓安保分野の討論(徴兵制と募兵制)、第8分科会、韓(DMZ)のユネスコ文化遺産の登録・日(平和憲法)擁護のための協力について、となっていました。各分科会にはそれぞれの専門家が日韓双方から4〜5名の発表者が配置され、さらに討論者として市民運動家が数名配置されていました。前広島市長の秋葉忠利氏や市民運動を代表する高田健氏、小森陽一氏、沖縄問題を闘う糸数慶子氏、前泊博盛氏、宇都宮健児氏などなど。韓国側からの参加者もほぼ同数いました。多くの学生たちのボランティアに支えられていました。
 私たち実行委員会の3人は第8分科会に参加しました。発表者は五十嵐敬喜氏(法政大名誉教授)とキム・ジェハン氏(翰林大学教授)で、菱山南帆子氏(「許すな!憲法改悪・市民連絡会」事務局次長)と私は日本側、韓国から3名が討論者で発言しました。私は2014年に「憲法9条にノーベル平和賞を」の運動で「第10回DMZ平和賞特別賞」を頂いたこと、その時韓国はセウォル号の事故に沈んでいたこと、そして泊めて頂いたDMZ平和村で聞いた韓国軍の実弾演習などから北朝鮮との緊張関係に驚いたことに触れました。最後に先日来日したローマ教皇の言葉「あなたのうちに平和があるように」がユネスコ憲章の前文「戦争は人の心の中で生れるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない。」と同じであることの大切さで私の発言の結びとしました。

注)DMZ (Demilitarized Zone=DMZ) : 韓国と北朝鮮の停戦ラインに沿って設けられた非武装地帯。軍事的衝突を避けるため南北双方に2キロ、合計幅4キロ、長さ248キロにわたって設けられた立入禁止区域は停戦後70年を経て、様々な自然の保護区となっている。